2020.11.10
合成の誤謬(ごびゅう)
「経済学用語」
個体において正しいことをしていても、全体にとっては決して好ましいことにはならないということを表現した言葉。とりわけ経済学者のリチャード・クーが、バブル崩壊後の日本の経済状況を説明するのによく使っている。不良債権でバランスシートが極めて悪くなった企業が、バランスシートをよくする行動(特に借金を減らす行動)を行うのは、一企業にとっては至極真っ当な行為である。しかし、すべての企業がこの方向へ向かうと国あるいは世界は不景気になってしまう。借金を減らすということは、投資を抑えることにつながり、需要が減り経済が停滞してしまう。これを補うのは、政府支出(政府が公共投資など)で、需要不足を補うしかない。
次元は違うけれども、自分が創業前に気づいたこと。
過去の日本のCAD市場を見た時、各CADベンダーは、生産性を高めようと製品の開発にしのぎを削ってきた。その結果、そのCADを利用するユーザー内では極限まで生産性が高められたところも多かった(そのために、いまだに古い日本製CADを手放せず利用し続けている企業もある)。一方、異なるCADを利用する企業間では、データ互換の問題があり、全く付加価値の生まない(生産性0)の作業が発生していた。いわゆる、“合成の誤謬”が発生していた。東南アジア諸国や中国、韓国ですら自国オリジナルのCADは少なく、ほとんどがAutoCAD(当時は不正コピー製品が多かった)で占められ、各企業の生産性は日本よりも低くても産業全体として、無駄のないCAD環境が自然に出来上がっていた。これでは、日本はいずれ負けてしまうと。20年前に比べて日本市場も改善されてきているけれど、まだまだ多くの無駄が発生する“合成の誤謬”の呪縛から抜け出していない。